世界から嫌われる中国と韓国 感謝される日本

宮崎正弘

安倍首相は2013年11月までにASEAN10ヶ国すべてを歴訪した上、12月にはASEAN首脳すべてを東京に集めて「日本ASEAN特別首脳会議」を開催した。ASEAN首脳が域外に全員集合したのはその結成以来初めてのことであり、文字通り歴史的イベントとして注目を集めた。日本が東南アジア重視に動いた背景には、アメリカのオバマ大統領がアジアへ軸足を移行するとしたピボット戦略が影響しているわけだが、やはりなんといっても覇権主義を鮮明にした中国に対する包囲網構築が第一の理由だろう。実際、中国からの侵略行為に戦々恐々とする東南アジア各国は、こうした日本の外交姿勢を歓迎し、フィリピンやマレーシアなどの閣僚からは、集団的自衛権の行使や国防軍設置を可能にする憲法改正へと乗り出した日本を支持する声明も出している。安倍首相が靖国神社を参拝してアジアの不興を買ったというところのアジアとは中国と韓国のことであり、それ以外のほとんどのアジア、特に東南アジア諸国は強い日本を待ち望んでいるのだ。

本書は、タイトルだけ読むとよくある嫌中嫌韓日本礼賛本のようだが、そういう向きはない。チャイナウオッチャーの宮崎正弘氏が安倍首相のASEAN歴訪をなぞるかのようにして、ミャンマー、ベトナム、インドネシア、タイ、シンガポール、マレーシア、ブルネイ、フィリピン、カンボジア、ラオスのASEAN加盟国をめぐって綴られたレポートだ(インド、スリランカ、ネパール、バングラデシュについても記述)。各地における日本への意識、日中韓企業の進出具合、経済事情、チャイナタウンの規模、インフラ、物価などのハード面のほか、国民気質、気候、食べ物、民族構成といった文化・風俗面も詳述されている。宮崎氏が観光ツアーで各地を訪れたのではなく、自らの足でほうぼうをめぐり現地の庶民の目線で取材した様子がよくわかる。なお、本編の総括として、日本は白物家電や携帯電話の販売では中韓の後塵を拝しているが、道路や橋梁、鉄道などの高度インフラ整備や医療分野において、その圧倒的な技術が存在感を持っていることに注目。安倍政権の登場によりアジア(中韓を除く)へと軸足が向いたことを契機に、今後、脱中国を果たした日本企業の大胆な巻き返しが始まるだろう。東南アジアの人たちは自信を取り戻した日本に大いなる期待を寄せているのである。


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