田母神戦争大学 心配しなくても中国と戦争にはなりません

田母神俊雄・石井義哲

日本の戦後の歴史教育では、いわゆる占領軍の歴史を教えられてきた。その洗脳教育を受け続けてきたことにより、日本は政府までもが軍事力の意味を理解していないという国政政治の舞台で致命的な欠落を生じさせるに至った。国際政治の本質は富と資源の分捕り合戦である。近年では軍事力を使って他国を侵略することは人権意識の高まりもあって困難になっているが、それでも国際社会の安定のためには軍事力が絶対的な役割を果たしている。軍事力が弱ければ軍事的威圧を受け、相手国の言い分を飲まされる。外交交渉の場では、話し合いで問題を解決することなど事実上できないのだ。また、国民のレベルでも自虐史観が蔓延しており、軍事に関しては自ら手足を縛る、およそ他国では考えられない国際的非常識がまかり通っている。非核三原則、武器輸出三原則、根拠規定による軍事行動、行き過ぎた文民統制、極度の武器使用制約、世界に公言して行う戦闘機の開発など、挙げればきりがない。このままでは日本の国力はどんどん衰退していき、しまいには「日本を取り戻す」どころか「日本を差し出す」ことになってしまう。航空自衛隊の最前線で空の守りに就いていた田母神俊雄氏と石井義哲氏が、国防をめぐる日本の現状をはじめ、アメリカによる日本占領政策がいまだ継続していること、領土・領空・防空識別圏などの正確な知識、中国の軍事的脅威の現実性、集団的自衛権の重要性などを熱く語り合う。

集団的自衛権の容認や特定秘密保護法の制定などの話が出てくると、途端に自称平和主義者は「これで日本は戦争ができる国になる」と言って騒ぎ立てる。だが、結論から言うと、戦争できる国は戦争に巻き込まれない。つまり、抑止力とは軍事力に担保されているのだ。では、「軍人が軍を統制すると必ず暴走するから文民に統制させろ」という意見がある。これもおかしい。軍人は戦争をしたがっているというのは偏見で、戦争を一番したがらないのが軍人なのである。シビリアンコントロールという遠回しの言い方に惑わされてはならず、2014年1月に発足した国家安全保障局にはもっと自衛官を入れていかないといけない。これ以外にも、田母神氏と石井氏の対談は熱を帯びていくが、両氏が訴えたいこととはつまり「戦争について勉強することが戦争を起こさない」ということ。本書は、田母神氏の著作や講演に何度か触れている方にとって既視感のある内容となってはいるが、あまり馴染みがなかった方にとっては入門編としてふさわしい一冊だと感じる。「国家の自立」とは「軍の自立」。安倍総理が政権のスローガンとして掲げる「戦後レジームからの脱却」への糸口とはいかなるものなのか。本書をきっかけに、多くの日本人が感得してもらえればと切に願う。


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