超インフラ論 地方が甦る「四大交流圏」構想

藤井 聡

インフラとは、英語でいうインフラストラクチャー、つまり「下部構造」のこと。社会、経済、行政を下から支えるものすべてを意味し、日本最大のインフラこそが「国土」だ。私たちは、この国土にさまざまに手を加えて都市をつくり、地域をつくり、道や鉄道や港をつくり暮らしている。この「国土づくり」「地域づくり」「街づくり」こそが、政治の王道なのであり、それをどうつくるかを考えるのが「インフラ論」だ。世界的にも、インフラ構築は地域間競争や国際競争にとって必要であるにもかかわらず、昨今の日本においては利権問題にすり替えられ、インフラ論(=公共事業の推進)が税金の無駄遣いであるという言説がまかり通っている。著者の藤井聡氏が、「日本はすでにインフラ後進国だ」という考察のもと、いまの日本にとってインフラ論がいかに重要か熱弁を振るう。

日本はしばしば道路王国と呼ばれ、またそれがゆえに税金の無駄遣い論がはびこるわけだが、果たして本当に日本は「王国」レベルなのだろうか。詳しいデータは本書を参照してほしいが、アメリカ、イギリス、ドイツと比べると、日本の高速道路の車線数、長さは圧倒的に劣っている。こうした状況は、鉄道、都市交通、パイプラインなどの点でも同様であり、日本のインフラは先進国レベルとは到底言えないことがわかる。自然災害対策のインフラ投資においては決して低いレベルではないものの、重要なことは自然災害の多さに対応できているかということ。しかし、砂防堰堤(土砂災害対策)の整備率は2割程度、津波堤防の整備が完了しているのはたったの3割というのが、いまの日本のインフラ事情なのである。

どうしてこうなってしまったのか。それは、インフラ政策費を高度経済成長期に比べて半分以下に削減してしまったことが直因だ。では、どうすれば日本のさらなるインフラ後進国化に歯止めをかけられるのか。藤井氏は、まず日本のインフラにとって何がもっとも必要とされているのか念を押しながら、整備新幹線の早期実現、高速道路におけるミッシングリンクの解消、東京一極集中の緩和など、具体的なデータを示しながら詳しく解説していく。その中でも、強調しているのが、目に見えるインフラ(ハード・インフラ)だけでなく、仕組みやシステムのインフラ(ソフト・インフラ)の重要性。つまり、日本の昔からの風習、家族という仕組み、さらには日本国政府や地方自治体の仕組みなどもインフラだ。「設計する」「整備する」といった概念よりむしろ、「育む」「育てる」という認識のもと、多くの人々が街づくりを自分事として捉えることで、健全な国民意識とナショナリズムの活性化へとつながっていく。インフラ論とは無機質なものではなく、人と人とのコミュニケーションを介した「生物」であるという認識を新たにしたい。


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