サムスン崩壊 日本から「ギャラクシー」が消える日

勝又壽良

サムスン電子(以下、サムスン)はもともと日本と深い関係にある。サムスンの経営的な基礎は、日本企業からの資本と技術の提供を受けて固まったからだ。だが、技術は得られても、経営思想は継承しなかったところがサムスン、いやあらゆる韓国企業に当てはまる。たとえば、半導体技術に関しては、製造機械は売ってもらえたが製造ノウハウは教えてくれなかったため、日本人技術者を土日韓国に招いてノウハウを得ていたという。技術を持ち出した日本人も責められるべきだが、サムスンは土日の2日間で1ヶ月相当の報酬を与え技術を故買していたのだ。どうやらサムスンは、10年以上にもわたり、日本の最先端半導体技術をタダ同然のコストで入手していたらしい。これに日米半導体戦争による円高ウォン安が加わり、韓国は濡れ手に粟のごとく日本の半導体シェアをあれよあれよという間に奪っていった。その後、白物家電からスマートフォンに至るまで、サムスン製品が日本製品を駆逐し世界を席巻していったのは周知のとおりだ。

サムスンの市場戦略で特徴的なものとして「80%主義」というものがある。サムスンは、上述の通り、円高ウォン安相場を利用した製品輸出戦略を採用している。そのため、ウォン安に振れる周期を見極めてから開発を始めても間に合わないため、日本企業が発売する新製品をターゲットとしてきた。つまり、日本よりも良い製品を作ろうとしている間に円安ウォン高に転じれば製品戦略は失敗するため、日本製品の模倣で良しとする。完璧主義より、80%で合格ラインとする「機会先取」の経営なのだ。そもそも、サムスンは市場について、自ら創り出すものとは理解していない。他社が作って売れている製品の市場に参加するという理解である。だから、日本企業などが作って成功した製品の二番煎じとならざるを得ないのだ。こうした考え方なので、技術者は育成せず、外部からスカウトしてきて使い捨て。これでは独創的な製品はおろか、基礎技術すら蓄積するはずがない。

たしかに、世界で日本製家電の影は薄くなった。実際、私も海外に行った際に家電量販店をのぞいてみたら、テレビやスマホなどがサムスンとLGばかりで驚いたことがある。では、日本製品は完全にノックアウトされてしまったのだろうか。いや、そうではない。日本の家電メーカーは「B2C」をやめ「B2B」へと移行しているのだ。つまり、スマホなど消費者を対象とした製品開発ではなく、部品を供給する企業向けのビジネスだ。「B2C」では中国など新興国と競争する分野では出血が多いが、「B2B」なら安定した製品価格のもと独占的な競争力を維持することができる。特に、パナソニックは従来の技術を活かして自動車や住宅への部品供給に進出して好業績をあげている。サムスンも中国企業からの追い上げに焦り、「B2B」への移行を模索しているが、果たしてうまくいくだろうか。硬直したトップダウンの企業文化、基礎技術を軽んじる体質、そして爆発するギャラクシー。サムスン崩壊の地響きがうっすらと聞こえてきはしないだろうか。


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