パナマ文書 : 「タックスヘイブン狩り」の衝撃が世界と日本を襲う

渡邉哲也

パナマ文書は、パナマにある「モサック・フォンセカ」という法律事務所によって作成されたもので、この事務所が関わる1970年代からの40年に及ぶオフショア金融センターを利用する企業や人の取引情報である。オフショアの多くは、税を軽減したり免税することで外国人の持つ資金を呼び込んでいることで「タックスヘイブン(租税回避地)」とされ、今回のパナマ文書流出により世界中の大企業や富裕層の多くが自国に税金を払っていない現実が明らかとなり問題となっている。さらに大きな波紋を呼んでいるのは、オフショアの匿名性を利用し、悪の枢軸とされるテロ国家やテロ組織、マフィアや暴力団などの反社会的勢力が、闇の金を「黒からグレー、グレーから白へ」と変化させる過程が明るみになったことだ。

基本的に、アメリカの9・11同時多発テロ事件以降、世界の金融ルールは厳格化されてきており、テロや犯罪に関連して金融規制の対象になっている人や企業、関係者は銀行口座や証券口座などを持てなくなっている。そうした人たちは、資産を運用することも資金の移動をすることもできなくなっているのだが、間に企業を挟むことで可能になってしまう。英領バージンでは匿名での会社設立が可能であるし、モサック・フォンセカのような法律事務所に全権委任してしまえば電話1本でほぼすべての法律行為ができてしまうのだ。パナマ文書が大きな意味を持つのは、タックスヘイブンを悪用した脱税企業が見つかるということ以上に、匿名口座や匿名資金の「真の所有者」が明らかになること。さらに、テロ組織の活動やマネーロンダリングの実態、それに関連していた企業を炙り出すことで、金融規制の穴を塞ぐことも期待されている。

タックスヘイブン悪用への対策について、日本人は他人事であるかのように思いがちだが、日本でも各国で同様の仕組みが進行している。マイナンバー制度やテロ3法(改正テロ資金提供処罰法、改正犯罪収益移転防止法、テロ資産凍結法)の成立がそれだ。マイナンバー制度の導入については、すべての日本国民にナンバーを割り当て、銀行口座や証券口座、さらには雇用される企業とひも付け、すべての資金の流れを透明化することを目的としている。これにより、暴力団員の不正銀行口座所持、労働者派遣による不法収益、地下銀行などを撲滅することができるとのことだ。「国際化」「グローバル化」。こうした昨今の世界的趨勢が金融の闇を深遠化させ、パナマ文書流出による大騒動を生んだ。国民がこの事実を知り、適切な対応をするべきだと世論を高めて政治家に是正を迫る。著者の渡邉哲也氏の意見には私も大いに賛成である。


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