中国が喰いモノにするアフリカを日本が救う

ムウェテ・ムルアカ

10億以上の人口を抱え、年平均5%を上回る経済成長を続け、さらには地下に豊富な天然資源が眠っているアフリカ大陸。「ラストフロンティア」と呼ばれはじめてから数十年たったいまも、世界各国の政府や企業、投資家の注目を集めている。これからの世界経済はアフリカを抜きにしては語れないほどであり、とくに豊富な地下資源は日本をはじめとする先進国が抱えるエネルギー問題、経済再生の原動力になるポテンシャルを秘めている。だが、日本には、アフリカで積極的にビジネスを展開させようとする企業やビジネスマンが少ないのが現実だ。その一方で、この10年ほどで経済的にも軍事的にも力をつけた中国が、大々的に進出を果たしている。アフリカは資源という大きなアドバンテージを持ちながら、貧困に苦しむ人たちを数多く抱えていることは知られているが、その困難の度合いに中国が拍車をかけているという。コンゴ民主共和国出身の著者ムウェテ・ムルアカ氏が、中国に侵食されるアフリカの現状を語る。

アフリカは天然資源の宝庫だが、今後の人口の伸びも魅力のひとつ。20年後は世界人口増加のうちの40%を占めると言われており、平均年齢も若く息の長い成長が期待できる。また、経済も急成長しており、すでにバイク、自動車社会に到達している地域もあるほか、中間所得層の拡大により日用品なども売れはじめるだろう。そして、アフリカでのビジネスは大きく3つ。ひとつ目はやはり資源で、鉄鉱石やマンガン、ニッケル鉱山の採掘精錬事業。2つ目は、電力が不足している国が多いため発電事業、3つ目はまだまだ未成熟だが、自動車や鉄鋼、油井管、建設機械などのトレードビジネス。こうしたアフリカビジネスにおいて、日本は、英仏米に次ぐ存在だったのだが、中国の進出によりパワーバランスが大きく変わり、いまでは日本の投資額の倍以上だという。中国はアフリカ各地で資源開発だけでなくインフラ構築も担っているが、先々で起こしているトラブルが大きな問題となっている。

ムルアカ氏は、コンゴで日本人と一緒にいたところ、現地の人が「中国人は殺してしまえ!」と叫びながら近づいてきた。理由を聞いてみると、中国が建設した道路では雨のたびに洪水が頻発し、また事前調査を行わないため地下に埋められた電線が漏電し、子供が感電死した事故があったという。アフリカ全土で、この欠陥道路への怒りだけでなく、中国製の携帯電話や家電などは壊れやすい、中国は日本や欧米企業のニセモノを安価で売りつけるという不信感が広がっている。さらに、中国企業は中国人労働者に作業をさせ、現地人を雇わないどころか技術移転もしない。地元がまったく恩恵を受けないのだ。これは、中国のアフリカ支援は「ひもつき援助」であり、中国の援助による建設やインフラ整備には、中国企業への発注が義務付けられているためだ。あまつさえ、その支援の裏側では、賄賂が横行しているという。こうしてアフリカ人の仕事が奪われ、自然環境が破壊されていく。

そんな中、ムルアカ氏は日本企業にラブコールを送る。たとえば日本の企業が橋を造るとき、現地の人を教育してメンテナンスの仕方や技術を教える。日本のプロジェクトは中国の人海戦術とは違って専門家や職人スタッフが少数精鋭でやって来るため、中国のようにやりっぱなしでは終わらない。日中のアフリカ進出の現状はつとに知られていることではあるが、現地の人たちがいかに中国に対し不満を持っていて、日本に期待しているか。本書を通して、アフリカの生の声を感じたい。


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