ツカむ! 話術

パトリック・ハーラン

本書の目的は、人の心を“ツカ”んで、相手を動かす側に立つこと。すなわち意見を通したり、人を説得できるようになることだ。ただただ自分の主張を押し付けるのでは、相手の心はツカめない。相手の価値観や考え方を知った上で、「相手が望むような形で説得できる」ような話術を身につけることが大事なのだ。そのために重要となるポイントは、相手の話を聞く意識。人の話に相槌を打って話を促しうまく話を引き出すこと、相手が使っている感情表現や何度も出てくる言葉をチェックして相手の価値観を理解すること、リラックスした雰囲気をつくり相手に興味を示す姿勢をつくること。日本人は、とかくコミュニケーション能力の欠如を自虐的にとらえ、またそのことを自分の性格的なものに起因していると考えがちだ。しかし、話術はトレーニング次第で上達できる。自己主張の弱さを自認している人は多いが、最初はそこをカバーするよりも、先述したように、相手の話をよく聞くことによって相手を説得させ自分の主張を通すことができる。話術を活かせば、相手の気持や考えを変え、行動するよう説得できる。お笑い芸人パックンマックンのパックンことパトリック・ハーラン氏が、さまざまコミュニケーションの場で活用できる実践的な話術理論を伝授する。

「言葉を用いて人と対談したり議論したりする最大の目的は、論破にあるのではなく説得にある」。古代ギリシャのアリストテレスの言葉だ。その説得に使う要素として以下の3つを挙げている。人格的なものに働きかけ話している人を信用しようという気にさせる「エトス」、感情に働きかけ聞いている人に特定の感情を抱かせる「パトス」、頭脳に働きかけその人の言うことを頭で考えて理解し納得する「ロゴス」。これら3つを意識した上で、相手の懐に入り込むための話術を駆使し、相手の話をうまく引き出すのだ。気をつけることは、相手の立場、国籍、環境によって、相手が持っている「常識」とそれを表すコモンプレイス(共通認識)を把握すること。相手の価値観はもちろんのこと、場の雰囲気やそれぞれの社会的地位などを加味して、互いの共通点を探っていかないことにはスタートラインに立てない。また、その国の文化にも注意が必要。日本は何も言わなくても伝わるハイコンテクスト文化だが、逆にアメリカは言わなきゃ伝わらないローコンテクスト文化なので、日本人が日本の感覚でアメリカ人に接するとそもそもコミュニケーションは成立しづらい。

大事なのは、あなた自身で説得するということ。あなたの言うことをどれだけ聞く気になってもらえるか。言っていることの内容がいいかどうかという以前に、聞いてもらえなければ意味がない。自分が語ることをみんなは聞きたいと思うだろうか。まずはそこからだ。


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