この本は、各国史を年表に従ってエピソードごとに分けて記述した豆知識的な本ではない。歴代王朝の皇帝が持つ「正統」を金科玉条とした中国史(司馬遷の『史記』)と「ヨーロッパとアジアの対立」を軸にした西洋史(ヘロドトスの『歴史』)を、“世界史以前”とばっさり切り捨て、モンゴルのチンギス・ハーン誕生をもって世界史の開始とする衝撃の一冊だ。モンゴル帝国の東西への膨張が各地の民族や部族を掻き回したことにより現代へとつながる世界が形作られ、資本主義経済、大航海時代、宗教の分布などが生まれていった様子がダイナミックに描かれている。
展開がとても早いので、高校時代に世界史を選択していたか、関心がある人でないと読みづらいかもしれないが、暗記だけで乗り過ごしてきた方には是非読んでもらいたい。こういった常識を覆す類の本は、知的好奇心が大いに刺激されるとともに、ややもするとトンデモ本と捉えられる向きがあるが、そうしたことなど気にかからないほど面白く、一気に読める。ステレオタイプな感想ではあるが、学校で習った世界史がいかに無味乾燥で躍動感に欠けたものであるかがわかった。