新人OL、つぶれかけの会社をまかされる

佐藤義典

中堅商社に勤める売多真子は、ある日突然、経営不振が続く傘下のイタリアンレストランの再建を命じられる。入社したてであることに加え、マーケティングのイロハも知らず、そのレストランに行ったことすらない真子にとって、まさに青天の霹靂。しかも、期限は2ヶ月というから、真子の口は開いたまま塞がらない。しかし、やるしかない。レストランの存続もそうだが、自分も職を失うことになる。真子は、親戚の有名コンサルタント、勝と会い、必死の思いで書き上げた企画書を見せるも、「読む価値もない」と突き返される。ここから、真子の「マーケティング脳を鍛える」奮闘が始まる。

勝からレクチャーを受けているうち、真子は、お客様は「価値」に対してお金を払っているということを知る。オシャレ感、友だちと大騒ぎできる楽しさ、隠れ家的な雰囲気、価値は人によってそれぞれだが、お客様を見てレストランの使い方を知ることがマーケティングの第一歩だ。真子は、これまでしてこなかったアンケートを取ることで、自分のレストランの傾向を捉えようとする。

「マーケティング理論なんて単純で、お客様が『どの店に行くか』を決めるプロセスを考えること。それがお客様のココロの中で起きていることだから」という勝のアドバイスに開眼した真子は、お客様が他店じゃなくてこの店に来る理由、つまり「強み」に欠けていることに気づく。要するに、差別化のことだが、単に競合に勝つということでなく、より高い価値を提供できるかがカギ。真子はその答えを見つけに、本場イタリアへと飛ぶ。

いろいろな読み方があると思う。本格的にマーケティングを学びたい人が入門書として概要を大掴みしたい場合、単純に興味のある人が専門用語に触れて語彙を増やしたい場合、社内では開発部にいるがマーケティング側のノウハウも共有したい場合、などといったところだろうか。専門書ではないので、学術的に掘り下げたい場合にはお勧めできないが、初めての人が取り掛かりとして手に取るには最適かもしれない。いささか大衆迎合を狙ったところがあり、内容的に一本調子なのは否めず、マーケティングがこれほど漫画チックに成功することはあり得ないだろうが、基本的な概念は抑えられているので次のステップへは容易になるだろう。


コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です