激安エアラインの時代

杉浦一機

いま日本の航空業界において、エアアジアやジェットスターをはじめとしたLCC(格安航空)が話題をさらっている。そのインパクトは、大手レガシー航空(日本航空、全日空)の半額以下というリーズナブルな価格設定にとどまらず、インターネットを介した事前予約ではなんと数百円で空の旅を楽しめるというサプライズから発したものである。もちろん、値段が安い分、機内サービスの簡略化、機内への手荷物持ち込みが有料化、払い戻しには一切応じないなど、レガシーと比べてさまざまな“不便”が存在する。だが、その安さは、これまで運賃の高さがネックになって飛行機に乗ったことのない人や、できるだけ経費を削減したいビジネス客の取り込みに貢献することとなり、LCCの今後の興隆が期待されている。

本書は、そうしたLCCの現状や課題、レガシーとの棲み分けなどを揺籃期から俯瞰し、現在に至るまでの航空業界を多角的に捉えた一冊。空の自由化である「オープンスカイ」に踏み切った日本において、大手である全日空がピーチアビエーションを立ち上げるなどする中、“準”LCCと言えるスカイマークやスターフライヤーがどのように事業改革をしていくのか、また今後続々と参入してくるであろう外資のLCCと競合、そして陸運の雄である新幹線の立ち位置など、単に格安航空業界だけにとどまらない広い視野の指摘が興味深い。

途中、業界関係者か愛好家でないと退屈してしまうと思われる教科書的な記述はあるが、LCCのことだけ知りたい方は1章の「格安航空(LCC)の誕生」と最終章の「甦るのか、日本の空」を読めばよいだろう。私は、年に1度は国際線を利用するのであるが、まだこれまでLCCを利用したことはない。5時間を越える長時間のフライトということで参入がまだないという事情もあるが、今後機材や運用の変更があって航路が確立されるので有力な選択肢として記憶にとどめておきたい。だが、付加サービスや手荷物の有無によって追加料金を支払うこととなり、場合によってはレガシーの運賃と同等もしくは割高になってしまう可能性もあるとのことなので、利用する際には気をつけたい。


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