ぼくらの真実

青山繁晴

著者の青山繁晴は、客員教授として勤務する大学の新入生に必ず最初に投げかける問いがあるという。それは「きみは独立しているか、日本は独立しているか」という問いだ。学生の多くは自分自身は独立していないが日本は独立しているとの答えを返すが、青山氏は「いや、きみは独立している。しかし、残念ながら日本はまだ独立していない」と問題提起する。人間は生まれ出た瞬間からひとりの人格として独立している。しかし、独立しているはずの日本が独立していない。北朝鮮に日本国民が拉致されても取り返しに行けないなど、「国の交戦権はこれを認めない」と定めた憲法9条に原因があるとする。青山氏は、学生たちに「(拉致被害者である)横田めぐみさんはきみのお母さんより年上になってしまっただろ」と語りかけ、「なぜ取り返しに行かないのか」を考えさせる。その答えとして、青山氏は、本物の憲法を作らないから、主権を自ら否定した憲法のままになり、国民を護るという国家のいちばんの基本が遂行ができないでいると喝破。日本が独立した主権国家となるべく、本物の憲法とはどのようなものかを考察していく。

日本型民主主義を考える章では、歴代の天皇皇后両陛下が実践されている「民こそが大事、民こそが主」という姿勢を例に取り、欧米の個人主義中心の発想とは異なる、日本なりの「誰をいちばん大事にするか」「物事をどうやって決するのか」を軸に持論を展開。また、「葉隠」に記された「武士道とは死ぬことと見つけたり」という一節から青山氏が悟った日本人としての真理、青山氏とメールで交流している沖縄の市議会議員のエピソードなどが紹介されている。本書は、青山氏の希望により表記の統一がなされていない。それゆえに、字面を追っているだけで青山氏自身の生の声に語りかけられているような気がする。つねに現場を訪ね現場の声を聞く青山氏の力強くも愛情あふれるその声から、私たちはこの日本で長く語られてこなかった「真実」を感じ取らなければならない。


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