ソ連崩壊後の国内経済を一気に立て直し、どん底にまで落ち込んだロシアを再びアメリカと伍するまでに叩き上げた、プーチン大統領の豪腕を綴ったレポート。国内の新興財閥(オリガルヒ)を軒並み手中に収めることで政治体制の足固めをするや、ドル基軸通貨体制の切り崩しを図ったり、戦略的に中国に接近することでアメリカに揺さぶりをかけてアメリカ一極主義から多極主義へと国際政治を巧みに操り、圧倒的なリーダーシップでロシアを世界の表舞台へと導いていく実像が描かれている。
これはプーチンによる闘争だけにスポットを当てた記録ではなく、国際関係、特にアメリカの政治・外交も詳しく解説しつつ、いま現在世界に何が起き、そして何が起こりつつあるのかについてまとめられたドキュメントだ。「おそロシア」の俗語が示すように、プーチンのやり方はときに強引でありときに冷酷であり、平和ボケした我が日本から見ると、ただの独裁者としてしか見えない。ヤクザの果たし合いを重ね合わせてしまうのであるが、実は何のことはない、これこそが激動する国際政治の中で浮沈に喘ぐ国家の運営を任された為政者が当然のこととして請け負う道なのである。ロシアしかり、アメリカしかり、EUしかり、中国しかりだ。
2期にわたった大統領職の後、メドベージェフ政権(1期)を挟み、今年春大統領として戻ってきたプーチン。米ロ再起動と呼ばれたメドベージェフ時代の宥和ムードは終了し、アメリカとのしのぎの削り合いが再開される。ドル基軸通貨体制、石油・天然ガスなどの資源、イラン核開発疑惑、欧州経済崩壊、中国の台頭など、さまざまなエレメントにおける丁々発止の決闘が繰り広げられるであろう。そんな中で、我が日本はどういうスタンスで立ち回ればよいのか。この本を読めば「話し合えば分かり合える」なんていう信念は、結果的に国を滅ぼす直因となることがよくわかる。
あまりにも衝撃的かつエキサイティングな内容で、たった2日で読了してしまった(読むスピードが壊滅的に遅い僕には珍しい)。しかも、ここまですごい本であるにもかかわらず、非常に読みやすく、またユーモアを織り交ぜながら書かれているので、たとえ国際政治に深い関心はなくとも今後の世界状勢、そして日本の行方を憂慮するのであれば是非手に取ってもらいたい。