米中抗争の「捨て駒」にされる韓国

鈴置高史

韓国の米中二股外交が破綻を迎えている。在韓米軍に国土を守ってもらいながら、その一方で中国に傾斜していった韓国。そのあまりに露骨な二股ぶりに米国が怒り出した。離米従中路線の言い訳に使ってきた「慰安婦問題」は2015年末の日韓慰安婦合意により封じ込まれ、中国からたびたび釘を差されていた地上配備型ミサイル迎撃システム(THAAD)も配備を認めざるを得なくなった。これで米国をなだめすかしたつもりだったが、今度は面子を潰された中国が怒り出す。中国の官営メディアはTHAADを配備した基地を核攻撃の対象にすると示唆、駐韓中国大使も「駐韓関係が破壊される」と公言した。2016年初から核実験を繰り返す北朝鮮の脅威が高まる中、米国との軍事同盟を強化せざるを得ない、でもそれでは中国の怒りを買う。韓国は米中間でフリーズしてしまった。米国から叱られれば米国の要求を聞き、中国から威嚇されれば国を挙げて動揺する、「迷走」するだけの国となってしまったのだ。韓国ウオッチャーの鈴置高史氏が、2015年10月から2016年5月までの朝鮮半島情勢を追う。

韓国が米国側に戻らざるを得なくなった要因は「慰安婦」と「北朝鮮」だった。2015年12月28日、日韓両国政府は慰安婦で合意した。安倍総理は絶対に謝罪しないと思っていた韓国人は外交的な勝利に浮かれたが、実際に謝罪文を読んだのは岸田外相であり、さらに「この合意は最終的かつ、不可逆的な解決」という文言が盛り込まれたことで、慰安婦カードを取り上げられたことに気づく。この慰安婦カードこそ離米従中を成功させる武器だったことで、韓国は米国の怒りの大きさを察知することとなった。一方の北朝鮮は、1月に4回目の核実験を行い、2月には長距離弾道ミサイルを発射。その直後、韓国は米国とTHAAD配備に向けた公式協議に入った。高まる北朝鮮の脅威から韓国を守っているのは、在韓米軍だ。韓国の国民に加え、その基地を防衛するためのTHAADを、守られている側の韓国が拒否することは、もうこれ以上ありえない選択肢だった。

当然、これに対し中国は韓国に大目玉を食らわせる。中国紙は「もし、THAADが韓国に配備されるのなら、戦略と戦術の両面で中国の軍事的な調査目標に公式に選ばれるだろう」とし、韓国を核攻撃の対象にすると脅し始めた。韓国は「THAAD配備について米国から打診は一切ない」と言い張って誤魔化そうとしたが、通用するはずがない。中国は韓国の決定的な弱みを握っているからだ。韓国は貿易でも金融でも中国にオールインしている。金融危機により中国からの資本逃避が起きて人民元が暴落すれば、真っ先に韓国が連座するわけだ。さらに、資本逃避に見舞われた際、命綱となるのが通貨スワップだが、韓国は日本や欧米とは結ばず、70%を中国に依存している。もし中国が「THAAD配備を認めれば、スワップを破棄するぞ」といい出したら、韓国は手も足も出ない。

こうした迷走する韓国をよそに、米中接近が起きている。米国は中国に「対北制裁案で譲歩してくれたら配備をやめてもいい」などの交渉を持ちかけているのだ。これが意味することは、朝鮮半島問題において韓国はキープレーヤーではなくなった、つまり韓国は米国から梯子を外され「ピエロ役」を押し付けられたということだ。まさにタイトル通り、「捨て駒」にされつつある韓国。韓国は完全にフリーズした。


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