政治家の殺し方

中田宏

横浜市の慢性的な財政改革、議会の馴れ合いの源となる市長の多選阻止などを掲げ、37歳の若さで市長に就任した中田宏氏。1期目より不要不急の手当の廃止、無駄に多い事業所の統廃合などを断行し、赤字財政を着実に黒字へと転換させていった。

しかし、そんな中田氏に、身に覚えのないスキャンダルが次々と週刊誌の誌面に躍ることとなる。一度だけ写真を撮った女性との不倫疑惑、現地の山火事により取りやめた海外出張を職務怠慢とすり替える報道など、明らかに意図的としか思えない誹謗中傷の数々が飛び交いだす。その黒幕はこれまでの放漫財政により利益を得ていた古参議員。中田氏の改革により既得権益を奪われたことで逆上し、ごく些細な記事ネタを週刊誌にリークしていたのだった。中には、ほんの数千円分の手当を削られたことで、職員から脅迫メールを送りつけられたという、よりあからさまなケースもあったという(この職員は後に逮捕)。

改革者により既得権益を取り上げられた勢力がマスコミを使って攻撃するというパターンは、国政の場ではもうお馴染みと言っていいだろう。最近の報道を見ていても、その露骨すぎる手法は失笑ものであるとはいえ、マスコミによって何度も繰り返し報じられるといつしか正しい情報として刷り込まれてしまうことになってしまう。たとえ、裁判によりすべて事実無根と証明されたとしても。

中田氏は「任務は全うした」として任期途中で市長を退職したが、相当のプレッシャーを受けていたことを本書の中で明らかにしている。こうした日本にとって必要な人物がマスコミからのバッシングにより打ちのめされていく現実。ニュースを丹念に読んでいくと、次にターゲットにされるのは誰なのか容易にわかってしまうことは怖いと言わざるを得ない。


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