政府は必ず嘘をつく アメリカの「失われた10年」が私たちに警告すること

堤未果

「気をつけて。これから日本で、大規模な情報の隠ぺい、操作、統制が起こるよ」。9・11の同時多発テロ後、通常ではあり得ないスピードで成立した愛国者法を担保に、アフガニスタン、イラク戦争へと突き進んだ米国と同じ状況が、3・11東日本大震災後の我が日本でも起きつつあることに対する喚起を促す一冊。

ハリケーンカトリーナの猛威によって壊滅的被害を受けた米国ニューオーリンズは、復興という美名のもと、一般の生活や教育からインフラの何から何まで、利益優先主義のグローバル企業の餌食となってしまった。このように、圧倒的な混乱に乗じ急激な改革をなすことを「ショック・ドクトリン」というが、まさに9・11後、急激に高まったナショナリズムを背景とし、国民が無知になっているうち、立て続けに戦争を起こしたやり方そのものである。そして、我が日本ではどうか。3・11後の被災地に対しては、外資の食い物にする足がかりとなる「復興特区法案」が成立してしまったではないか。

こうした大転換の背景には、「コーポラティズム(政府と企業の癒着)」が存在すると、著者の堤未果は説く。企業といっても国民意識に根ざした救世主的なものではなく、自分たちだけが儲けることに汲々としている伝統的巨大企業、またはグローバル企業のこと。都合の悪い報道は一切させない東電を中心とした原子力村を俯瞰すれば、おのずと明らかであろう。つまり、99%の一般人に対する、1%の人たちのことだ。

本書ではこれだけでなく、SNSを使った革命、TPP、資本主義の限界、巨大国際機関などを取り上げ、テレビを通して伝わってくる「違和感」の正体を探る。これらの術中に陥ってしまった国の人々のインタビューからは、「日本人には早く気づいてほしい」というメッセージがしきりに送られてくる。私たちはこの意味するところを強く噛みしめ、我ら祖国がすでに看過できない危険なラインに迫っていると考えなければならない。


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