アベノミクスで日本経済はどのように変わるのか。その一方で、リーマンショックの影響で凋落の一途にあるアメリカ、ギリシャ危機に端を発し崩壊寸前にあるEU、通貨安政策の行き詰まりに悶える中国・韓国など、世界経済は今後どう推移していくのかを俯瞰。リフレ派の代表とも言える渡邉哲也氏が、大局的かつ稠密な視点で語る。
タイトルにこそ「日本経済」がフィーチャーされており、主語としてはいちおう機能しているが、実は日本経済そのものについては3分の1も触れられていない。むしろ、日本のバブル崩壊、リーマンショックを経て、世界の経済および金融がどのように変貌していったかについて詳述されており、その渦中で日本はどう泳いでいくべきかの提言がなされている。ただ、そうした中で渡邉氏が一貫して主張しているのが、世界は小さな政府(グローバリズム)から確実に大きな政府(保護主義)へと向かっているという点だ。
内容的に三橋貴明氏の「2013年 大転換する世界 逆襲する日本」とダブる箇所も多々見受けられたが、出色だったのがミクロレベルでの日本の実体経済について警鐘を鳴らしていること。たとえば、PB商品(安価な海外製品による自社ブランド商品)の拡大によってナショナルブランドが駆逐されデフレがさらに進行すること。郊外型量販店の進出により流通が寡占され最終的に街全体がゴーストタウンと化すこと。盲目的な原発稼働停止により電気代が上がることで企業が海外に逃避し雇用がどんどん奪われていくことなどだ。
たしかに、アベノミクスにより株価も上がり円高も是正されつつある。まだ具体的な金融政策を始めていないにも関わらず。だが、本当に「日本経済がすごいことになる」には、テレビや新聞がさかんに叩く公共事業(国土強靱化)の大々的な実施、官民一体となった護送船団方式の復活などがキーワードになると渡邉氏は説く。日本経済の復活はまだ緒についたばかりだ。