欧州復権の象徴をとなるべく、域内の通貨を統合し誕生した「ユーロ」。2002年の統合から順調な滑り出しを見せたものの、2008年のリーマンショック後、外国資本の相次ぐ引き揚げによりスペインをはじめとした南欧諸国の不動産バブルが崩壊。デフォルト不可避とされているギリシャ危機に至るまで、米国ドル、日本円と伍するはずだったユーロがなぜ急激な凋落を見せたのか、その原因と今後の見通しについてソフトな語り口で綴られている。
本書ではユーロ誕生からその現況まで、歴史的経緯や背景について噛み砕いた文体で詳細に語られている。ただ単にユーロそのものを解説しているだけではなく、「世界経済の中のユーロ」という位置づけで、マクロの視点で全体を俯瞰しながらスポット的にユーロに関する説明がなされている工夫が心憎い。通貨高・通貨安のメカニズムをはじめ、デフレ・インフレの成り立ち、正しい金融政策のあり方などが、これでもかというくらいわかりやすく書かれている。「通貨がわかれば、世界が読める」という副題は誇張でも何でもない。
そんな中で、筆者の安達誠司氏が主張しているのが、「日本がギリシャ化することはあり得ず、逆にユーロが日本化している」ということ。これは、中央銀行を一本化したことでユーロ導入国は自国の金融政策を取ることができず、緊縮財政による消極的な(さらなる税収減となる)政策しかできないという論拠に基づいている。もちろん、理由は他にもあるが、とにかくユーロ諸国が見習うべきはアベノミクス(大胆な金融緩和など)であり、日本は「国債が暴落してギリシャ化する」とのたまうアジテーターに対してユーロの現況と照らし合わせて冷静になることが求められている。経済のことはよくわからないが、ユーロ危機あるいは世界経済について知りたいという方にはこれ以上ない一冊と言えるだろう。