新島八重 愛と闘いの生涯

吉海直人

幕末の会津藩に生まれた八重は、「ならぬことはならぬ」を訓戒とした厳しい教育方針の中でも、勝ち気で男勝りな性格により奔放な少女時代を送る。やがて戊辰戦争が勃発し会津に戦火が及ぶと、先の鳥羽伏見で戦死した弟の戦装束を身につけ奮戦。戦後、各地を放浪するが、生き別れた兄・覚馬が京都にいることを知り上洛。その覚馬を通じて新島襄と知り合い、同志社設立の最中、八重と襄は結婚する。八重は同志社の運営とキリスト教の布教に邁進する襄を陰に陽に助け、襄の死後は日清・日露戦争で篤志看護婦を務め、「日本のナイチンゲール」と称賛された。昭和7年(1932年)、86歳で永眠した。

大河ドラマの主人公として取り上げられているということで興味を持った(大河ドラマ自体は見ていないが)。「ハンサム・ウーマン」という愛称が示すとおり、八重は当時のつましい女性像とは真逆の“女傑”であり、また最近でいうところの、きっぷのいい肝っ玉母ちゃんといったところか。ただ、作中で著者が指摘しているとおり、八重に関しては史料が少なく、それに1年間のドラマとしてその生涯を描くにはエピソードが物足りない。どのように見せてくれるのか、脚本家の腕の見せ所となるだろう。

本書は八重の人生を小説形式で追うものではなく、現存している史料、雑誌記事、八重作の和歌など、断片的なデータを手がかりに虫食い葉的に明らかにしていくという体裁が取られている。限られたリソースを基に、歴史上の人物にスポットを当てていくという作業が暗号解読的でいかに骨が折れるものかわかるという意味では面白かった。また、大河ドラマを楽しむコツとしては、こうした背景を知っておくことで脚本・演出上の工夫がどのようになされているかを見つけ出すことだともいえるだろう。だが、純粋にドラマのガイドブックとして手元に置きたいのであれば、NHKが出しているムック本を選んだほうが賢いかもしれない。


コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です