日本人だからこそ「ご飯」を食べるな 肉・卵・チーズが健康長寿をつくる

渡辺信幸

太ったり病気になったりするのは、本来食べるべきものを避け、控えるべきものばかり食べている食生活が原因。肉食動物であるライオンが葉っぱや木の実を食べているのと同じだから、そのうち体調を崩してしまうのも当然だ。ヒトは、食事から摂取した栄養によって骨や筋肉や内臓をつくり、活動のエネルギーを得ている。つまり、食事によって生命維持をしているのだが、ほとんどの現代人が「ヘルシー」や「低カロリー」という誤解のために低栄養あるいは栄養失調の状態になり、結果として健康を害しているのが現状。肥満解消どころか、高血圧や糖尿病などの生活習慣病をもたらしている。では、本当の意味でのヘルシーな食事とは何だろう。それは、必須栄養素であるたんぱく質と脂質を十分に摂取し、必須栄養素ではない炭水化物(糖質)を控えるということ。これこそが、ヒトのDNAに書き込まれたデータに沿った栄養摂取のあり方なのだ。

著者の渡辺信幸氏は、推奨する食事法として、たんぱく質と脂質を豊富に含む3つの食品(肉、卵、チーズ)を毎日たっぷり食べ、炭水化物(糖質)を多く含む穀物、果物、野菜を控えることを提唱。肉、卵、チーズの英語の頭文字を採り、「MEC食」と名付けている。この食事をしばらく続けると、代謝や免疫などの体内機能が向上して病気にかかりにくくなり、肥満や過体重の方には10キログラム単位で無理なく自然に痩せることができるという。日本人の一般的な食事には、必ずご飯、パン、麺類が登場するがこれが考えもの。これらは糖質こそ多く含んでいるが、たんぱく質や脂質はもちろん、ビタミンやミネラルもほとんど含まれていない。栄養失調になれと言っているようなものだ。MEC食は「人体に必須の栄養素を十分に摂取し、必須でない栄養素を取らない」という考え方に基づいている。よく噛んで食べることだけ心がければ、1日3食や食事を取る時間にこだわる必要はない。

結論から言えば、最初の30ページくらい読めばおおよその内容は把握できる。要するに、肉、卵、チーズを食べなさいということだ。しかし、随所に、世間一般に出回っている「ヘルシー」な健康食が神話でしかないことが、しっかりとした論拠を基に裏付けられていて興味深い。そのひとつが、1961年から現在まで継続している久山町研究の事例。研究には40歳以上の町民全員が参加し、診療や健康診断などのデータがすべて蓄積、解析されており、日本人の死因上位を占めていた脳卒中や心臓疾患などが環境にどう影響されているかを目的としている。ところが、町民を健康にするはずの研究が、逆に肥満や糖尿病が著しく増えるという結果となってしまった。町民に行われていた栄養指導こそ、粗食、菜食、つまり私たちが「ヘルシー」と信じ込まされている低カロリーの食事だったのだ。本書はこのほかにも、MEC食のメリット、カロリー制限食の誤解、それぞれの栄養素の働き、原初からのヒトの食性といった文化人類学的な視点など、読みどころは多い。健康診断で「やや肥満」の警告に悩まされている私。しばらくこの食事法を試してみようと思う。


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