バブルが崩壊してからデフレ不況を20年も脱却できずにいて、さらには大震災、マスゴミ、無能政治家という苦境に見舞われている現在の日本。そんな中、内閣総理大臣に就任した34歳の女主人公。彼女は、現在と似たような経済状況だった1930年代の蔵相・高橋是清との邂逅を繰り返し、デフレ脱却のための処方箋、ひいては真の国民経済について学んでいく。
経済評論家の三橋貴明氏による渾身の書き下ろし小説。氏の著作やブログを読んでいる方にはほぼお馴染みの内容となっているが、この本はそうでない方にこそ手に取ってもらいたい。すらすら読める文体、かつ明快なストーリー仕立てなので、固い実用書に抵抗のある方にぴったりだ。いまのデフレを抜け出し、再び成長路線に戻るのはこんなに単純なことなのかと思わず唸ってしまうと同時に、なぜいまの政治家がこれを実行しないのかと不審に思わずにはいられなくなる。将来世代にツケを残さないため、いまやるべきことは増税や自由貿易(TPP)ではないことがよく理解できる。