コーヒーが冷めないうちに

川口俊和

「その席に座ると、その席に座っている間だけ望んだ通りの時間に移動ができる」。とある街に、そんな喫茶店がひっそりと佇んでいる。ただし、誰でもが気軽に過去にタイムワープすることができるわけではなく、大変面倒なルールがいくつか … 続きを読む

海の見える理髪店

荻原浩

海辺の小さな町にある理髪店。時代遅れの洋風造りの民家を改装したと思わる店内は、古びた外観を裏切るたたずまいで、清潔で整然としている。浮かし模様のある白い壁紙はアイロンを当てる前の洗いたてのシーツのようで、よく磨かれたダー … 続きを読む

コンビニ人間

村田沙耶香

主人公は30代後半の女性。正規社員としての職歴はなく、大学在学時にアルバイトで勤めていたコンビニ店員をいまも続けている。男性との性交渉はもちろん、交際すらしたことがなく、異性を意識するような言葉遣いや服装にも無頓着。友人 … 続きを読む

秘密結社Ladybirdと僕の6日間

喜多川泰

高校3年の桜山颯汰。部活動にも積極的に参加せず塾にもサボりがちという、怠惰な夏休みを過ごしていた。ある日、昼前に目覚めた颯汰は、外食するため駅前の商店街へ向かおうと自転車にまたがる。だが猛烈な炎暑のもと、次第に意識が朦朧 … 続きを読む

陸王

池井戸潤

埼玉県行田市に本社屋を構える、こはぜ屋。創業以来100年、綿々と足袋製造を生業として続いている老舗だ。しかし、和装に変わって洋装が主流になって久しい現在において、足袋の需要はとっくに底を這い、祭り衣装なども手がけてはいる … 続きを読む

ペンギン・ハイウェイ

森見登美彦

小学4年生の「アオヤマ君」は、ある日、登校中に不可思議な光景を目の当たりにする。歯科医院を過ぎたところは空き地になっており、電信柱に囲まれてコンクリートに小さく区切られた草原がずっと続いているのだが、そこの真ん中にペンギ … 続きを読む

幻庵 下

百田尚樹

服部立徹改め井上安節は、寺社奉行から井上家家督相続を認可され、十世井上因碩を名乗った。因碩(のちの幻庵)は、最大最強のライバルである本因坊丈和と家元の誇りを懸け、激しい碁を繰り広げていく。江戸の碁好きを唸らせる両者の対局 … 続きを読む

ルパンの消息

横山秀夫

宴もたけなわといったところで、署長の後閑は一枚のメモを渡される。15年前の女教師の自殺事案につき他殺の疑い濃厚との有力情報あり、至急、帰署されたしというものだった。一気に酔いが冷めた後閑は酒席を立ち、料理屋の裏に待機して … 続きを読む

幻庵 上

百田尚樹

江戸時代後期、文化・文政時代から幕末にかけての囲碁界を舞台に、碁界最高権威「名人碁所」の座をめぐる天才棋士たちを描いた物語。本因坊家、安井家、井上家、林家といった4つの家元が、天上人とも称される「名人」を排出し、さらに将 … 続きを読む

図説アーサー王物語

アンドレア・ホプキンズ

まずアーサー王伝説とは何か、という問いかけから始まる。それは西暦5、6世紀頃に生きたイギリスのある国王の歴史的記録とされているが、そもそも記録自体少なく、たとえ存在している場合でも、事実を述べたものと考えるわけにはいかな … 続きを読む