嘘だらけの日米近現代史

倉山満

建国以来、アメリカ合衆国はつねに世界史の中心軸であり続け、現在に至るまで世界の警察として政治・経済ともに頂点に君臨している。そして、我が日本はそうしたアメリカの背中を、ときに従い、ときに抗いながら追い続けている――という通説を、著者の倉山満氏が「歴史認識の重大な誤り」と一刀両断する。

英国からの迫害に勝利したはずだった独立戦争、奴隷解放宣言をし英雄だったはずのリンカーン、民族自決を唱え平和主義者だったはずのウィルソン、民主主義の保護者を任じ米ソ冷戦に終止符を打ったはずだった……などはすべて「嘘」だと喝破。その一方で、江戸時代はアメリカを“小国”としてあしらい、大東亜戦争では世界最強の陸海軍(これは各国の共通認識)を率い、負けるはずになかった戦いに没し、戦後アメリカの“所有物”に堕してしまった日本の姿を描く。

教科書の記述イコール通説と捉えて間違いはないだろうが、いまや形骸化した歴史教育はすべて「嘘」であり、その逆説こそが真実であるとは限らないのも事実。だが、すでに半世紀以上経過しているのにいまだに「戦後○○年」と言い続け、国体および日本史を全否定する占領政策にどっぷりと浸かっている現代日本人の事なかれ主義にも問題はある。いま焦眉の急なのは、あたえられた情報を鵜呑みにすることではなく、さまざまな異説俗説通説に触れ、自ら考え正しい判断を導き出せるようになること。そういった意味では、この本はとても面白く有意義であった。


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