歴史から考える 日本の危機管理は、ここが甘い 「まさか」というシナリオ

上念司

どうして今の日本はこうなってしまったのか。その答えを導くカギは、普段信頼できる情報源として接しているメディアの裏側を垣間見る努力をすることにある。「まさか、そんなこと絶対にあり得ない」という思い込みを脱し、リアルで生々しい本当の危機管理に目覚めるためのフレームワークを提示する。

情報を流す側には、それを伝えることの背景に、必ずターゲットが存在し、マクロ的な意図が伏在する。「人口減少だからデフレ」「不況下でも社会保障のため増税」「政府の借金で国債暴落」など、一見理にかなっているように思えるフレーズも、実は国家を滅亡に導く本末転倒のロジックではないだろか。こうしたメディアの情報操作の現状を、日本を対米戦へと突き進ませたプロパガンダや、戦後媚中派政治家を多数生んだスパイ活動などの歴史的な事例を交えながら、詳しく解説している。

これこれこういう考えの人がいて、みんなにこれこれこういうことをさせようとしている。といった感じで、情報を操作する(される)テクニックが教科書的に説明されており、系統立っていて非常に明快。さすがに、どんな情報にも疑いを持って接することは気ぜわしくなるだけだが、国民一人ひとりが得た情報について「それが何の得につながっているのか、誰の得につながっているのか」を考えられるかで、今後の日本の舵取りが定まると結ばれている。

たしかに、こうした心構えは国家的な陰謀を阻止するために必要な要件となるが、同時にビジネスにおける交渉においても役立つ見識であることに変わりはない。「どうして今の日本はこうなってしまったのか」もそうだが、「どうしてうちの会社はこうなってしまったのか」と天を仰ぐ前に、手に取っておきたい一冊だ。


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