戦後史の正体

孫崎享

日本の戦後史は、アメリカからの圧力を前提に考察しなければ、その本質が見えてこない――。米国による占領統治を経て現在に至るまで、歴代の総理大臣はどのように米国と対峙してきたのか。「対米従属路線」と「自主独立路線」、いずれかのスタンスに立ったそれぞれの総理大臣は、米国からどのような圧力を受け、どのような仕打ちを受けてきたのか。元外務官僚の孫崎享氏の筆が冴えまくる渾身の大作。

数年間の占領統治により骨抜きにされた日本が、米国によって担わされた次なる使命は反共防波堤となることだった。事あるごとに再軍備を強要し負担を迫る米国と、それに抵抗あるいは従属してきた日本。反安保闘争、ロッキード事件、リクルート事件など政治絡みの大動乱の陰には必ず米国の陰があり、そのたびに首相のクビのすげ替えが行われてきた。対米従属派の代名詞であった吉田茂が長期政権であったのに対し、普天間基地の移設で米国に抵抗しようとした鳩山政権が短命だったことを思い返すとわかりやすいだろう。

筆者の孫崎氏はこの図式こそが日米関係の琴線であると説き、両国の関係を読み取り、将来を展望する際のヒントになっていると示唆する。こうして見てみると、昨今行われた安倍=オバマの日米首脳会談の「成果」が見え隠れてしてはこないか。TPPの聖域なき関税の存在の確認、日米同盟の堅持確認、そして会談前の円安容認発言。米国が経済政策において日本に借りを作った上で、さらに今後集団的自衛権も容認することで、日本を中国に対する強固な防波堤とする意図が見えてはこないだろうか。なにしろ、米国にはもう世界を制覇するだけの国力はないのだから。


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