ヤクザとオイルマネー: 石油で250億円稼いだ元経済ヤクザが手口を明かす

渡邉哲也、猫組長

政治も経済は裏と表で動いている。人を動かす最大の原動力は欲であり、欲があるところに金が集まり、金のあるところには裏も表もなく人が集まる。当然、そこでは大小さまざまな衝突が起こり、それを解決する人と手段が必要になる。表の手段で解決するのが国家なり政府という権力であり、裏の手段で解決するのがヤクザなど暴力装置を持った集団なのだと言えよう。本書は、その裏の組織にかつて所属し現在は金融の専門家として各メディアで活躍する猫組長と、経済評論家の渡邉哲也氏による対談集。私たち一般人が知ることができない中東問題とヤクザの実態、オイルマネーと金融ビジネス、それを規制する現在までの当局の対応と今後の世界の流れを、猫組長の実体験を基に解説する。

すさまじい経済成長をしていた当時の中国に莫大な石油需要があった。ヤクザも目を付けており、その多くが中国のバイヤーサイド(買い手側)に走り注文ばかり取っていた反面、猫組長はセラーサイド(売り手側)に向かった。最初に接触したのはマレーシアの国営石油会社ペトロナスだったが、日本への原油は大手商社を通じてでしか行わないということで、大手商社が手を出さない危険地帯や紛争地帯へ行けと言われる。そして猫組長はイエメンへと飛ぶ。イスラム特有の商習慣を乗り越え、首尾よく契約にこぎつけた猫組長は、3ヶ月で5000万円ほどの粗利をあげた。しかし、このあと猫組長は莫大な損害をこうむることとなる。

通貨の信用力は暴力が担保する。弱くて崩壊の可能性がある国の通貨を持ちたいという人は少ない。米ドルの優位性は絶対的なので、朝鮮半島緊張時に円が買われるのは日米同盟があるからであり、アメリカはいざとなると最強通貨ドルを武器に躊躇なく暴力を行使する。ヤクザと一緒だ。そうした思惑を帯びたマネーが飛び交う中東という油田地帯に乗り込んだ猫組長だからこその説得力がある。本書は、石油ビジネスで大金を得たもののアメリカに没収されパレルモ条約で拘束された件のほか、山口組一連の騒動、共謀罪成立の背景、タックスヘイブンを経たマネーロンダリングなど、私たちが「アンダーグラウンド」と呼ぶ内容の話が次から次へと飛び出してくる。項をめくる手が止まらなかった。


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