世界史で学べ! 地政学

茂木 誠

世界史を正義の実現と見る「理想主義」とは真逆の立場を「現実主義(リアリズム)」という。「歴史には正義も悪もない。各国はただ生存競争を続けているだけだ」という見方だ。つまり、第二次世界大戦は列強の勢力争いであり、連合国が勝ったからといって正義が実現したわけではなく、今度は戦勝国の間で新たな勢力争い(冷戦)が始まったのだ、となる。リアリズムの歴史観では、生存競争は古代から今世紀まで国際紛争の主要因となるものであり、これを正当化するために宗教やイデオロギーが利用されている、という見方になる。地政学は、そのリアリズムのうちのひとつであり、国家間の対立を地理的条件から説明するもの。国家と国家が国益をかけて衝突するとき、地理的条件がどのように影響するかを論じる帝国主義の論理でもあるのだ。

以下、本書はアメリカ、中国、朝鮮半島、東南アジア、インド、ロシア、ヨーロッパ、中東、アフリカの順に、各地域ごとの歴史と現在を俯瞰していく。「世界史」と「地政学」をタイトルにしている通り、縦軸で展開される世界史と横軸の拡がりを持つ地政学とがバランス良く言及された記述となっている。ただ、いま話題の地政学について深く掘り下げているかというとそうでもなく、各国史に地政学的なエッセンスを加えたという印象は拭えない。それに、世界史と言うにはややライトな読み応えであることも否めない。なので、あまり「世界史」や「地政学」のキーワードを重く捉えず、各地域で何が起こっているのか、それはどの地域からどんな影響があったのか、というスタンスで、気軽に読める教養書として手に取るべき本だと感じた。


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