女子と愛国

佐波優子

ここ数年で、シュプレヒコールをあげながら繁華街を練り歩く一団を目にする機会が多くなった。メディアで主に取り上げられるのは反原発・脱原発を訴える集団であるが、注目すべきは日の丸を掲げ「日本を守ろう!」とか「日本は素晴らしい国です!」と沿道に訴えかける愛国デモの台頭である。こうしたデモに参加する人々の性別・年齢はさまざまだが、筆者の佐波優子氏は女性、特に20~30代の若い女性の数が多いと指摘する。デモによっては半数近くを占めることもあるとのことだが、ではいったい何によって彼女らは突き動かされ愛国活動に勤しむようになったのか。そうした彼女らの声を拾い集めることで、現代に生きる愛国女子の姿を描き出す。

フジテレビや朝日新聞、電通といったメディアの偏向に対して抗議の声を上げたデモをはじめ、中国の尖閣侵略、韓国大統領の竹島上陸など、外国が日本侵略の意図を見せたことに端を発するデモまで数多くあり、現在でも日本のどこかで毎週のように開催されている。だが、愛国デモの範疇に入るデモは、何も一般国民の怒りから生み出されたものだけでなく、日本の歴史や伝統をアナウンスするデモや、日本がアジア諸国から感謝されている事実を知らしめるデモ、さらには2ちゃんねる発の靖国神社参拝オフ会(厳密にはデモではないが)の開催など、日本人が忘れかけている民族の誇りを呼び起こすデモも行われている。そういったタイプのデモの発起人が女性であり、しかも若い女性の参加が目立つというのだ。

では何が彼女らを動かしたのか。それは言うまでもなくインターネットから得た情報である。学生時代、歴史の授業で日本悪玉論に染め上げられ大人になっても贖罪意識を捨てられなかった人が、インターネットの登場により真実の歴史を知り愛国意識を急速に高めることは、もはや一種の通過儀礼と言ってもいいだろう。男性ならいままで騙されてきたことに対する怒りを燃やすところだが、女性はそれとは違う種類の危機感を抱くという。女性は、家庭に土足で入り込み敷地を盗ろうとする者たちへの生理的嫌悪感・恐怖感がより強く、また子を産み育てていくという家を守る使命感がより固い。佐波氏は、男性が攻撃的になるのとは対照的に、女性は防衛本能から行動に出る傾向にあるのではないかと分析する。

この最たる例が従軍慰安婦問題だろう。いまや日本国内で捏造がバレて日本人を騙すことができなくなった韓国は、国際世論を味方につけようと、アメリカをはじめとする世界各地に慰安婦像(碑)を建てようとしている。実際に慰安婦像が建ってしまった地区では、現地の日本人がいじめに遭っているとのことだ。これに対し、子を持つ母親の立場から反対活動を続けているのが「なでしこアクション」だ。代表の山本優美子氏を中心に「慰安婦=性奴隷」のウソを訴え、政府に対して慰安婦への賠償決議をした各地の議会に質問書を送ったり、外務省前での水曜デモ阻止の行動を起こしたり、ごく最近ではオーストラリアでの慰安婦像設置阻止に向けた署名活動をするなど、日本の名誉を守るための活動を精力的に続けている。

本書は、ほかにも予備自衛官に志願した女性や、たったひとりで反原発デモにカウンターした女性、台湾人に教えられた日本精神を後進の指導に取り入れた女性など、デモのみならず個人的にも日本のために行動している女性が数多く取り上げられている。加えて、愛国活動に参加する女性ならではのトラブルが記述された箇所も注目したい。なお、もし日本が有事に巻き込まれた際、銃後の守りにつくのは女性だ。その女性に国防意識がなかったら、いくら前線が持ちこたえていても内部から崩壊することになり戦い続けることは不可能となってしまう。純然たる愛国心を取り戻すとまではいかずとも、若い女性の間で日本を守るための意識が芽生え始めているこの現実を大いに歓迎すべきだと思う。


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