ベスト・パートナーになるために

ジョン・グレイ

なぜ男性と女性は分かり合えないのか。なぜ男性と女性はすぐちょっとしたことでいがみ合うのか。答えは簡単だ。お互いが根本的に違った人種だということを理解していないから、つまり「男性は火星人で、女性は金星人である」ということを理解していないからだ。男女とは、これほどまでに精神的にも生物学的にも価値観を異にしているため、「言葉の食い違い」や「気持ちのすれ違い」が起きるのは当然のこととしなければならない。心理学博士のジョン・グレイ氏が、男女間のストレスを解消する方法、また相手をいい気分にさせながら自分の意志・要求をも満足させるための心構えを伝授する。

男性は、スポーツカーや高性能コンピュータなどの具体的な事物のほか、自らもそれらを創造することで目標を達成し自分の能力を表現することに心を奪われる。自信と誇りを追求するのだ。だが、対人関係で失敗を犯すとひどく落ち込み自分だけの世界に閉じこもってしまう。相手から必要とされていないと感じると意欲を奮い起こすことはできなくなり、さまざまな人間関係から逃げ出すようになる。

一方、女性は愛、コミュニケーション、美しさ、人間関係を大切にし、互いに支え合い、助け合い、育み合うことに多くの時間をかける。相手との深い心の交流と親密な関係に生きがいを見出す。そのため、自分が決して孤独な存在ではないということを確信する必要がある。相手からの同情、理解、慰め、自分の行動は正しいと認めてもらうことをつねに強く求めているのだ。

男女は互いのこうした行動原理を理解できない。男性は女性が落ち込んでいるとき、相手を思うがゆえにひとりにしておくべきだと考え、あるいはろくに話も聞かず性急に解決策を提示して彼女をさらに落ち込ませ怒らせてしまう。また、女性は男性が自問自答し回答を導き出そうとしているとき、頼まれもしないのに余計な口出しをしたり救いの手を差し伸べようとすると、プライドを傷つけられた彼の逆鱗に触れてしまう。要するに、求めているものは、男性が具体的な解決策であり、女性は感情移入なのだ。これがうまく調和しないことで、互いに対する拒絶感や挫折感につながってしまうのは無理もない。

本書は基本的に、男性は「ミスター・フィクサー」であり女性は「教育委員長」であるという原則を基に展開していく。心理学的な男女間の差異を解明するだけでなく、このシチュエーションで絶対に言ってはならないセリフ、土壇場で使えば関係が良好に収まるセリフなど、実用的な例も数多く紹介されている。あくまでも男女間のコミュニケーションを円滑にするための一般論であり誰にでもあてはまるとは言いがたいが、私自身も身に覚えがある点や耳の痛くなる箇所に多く遭遇した。男女問題でうまくいかず悩んでいる方のための必読書と言えるだろう。


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