台湾に生きている「日本」

片倉佳史

台湾に残された日本統治時代の遺構をめぐって綴られた一冊。90年代後半から台湾に移り住んでいる著者の片倉佳史氏が、実際に自らの足で台湾各地を訪問。そこで発見した日本にゆかりのある建造物やインフラ設備、そして日本統治時代を生きた現地の人々との交流を通して、日台間の固い紐帯と未来に向けた絆を見出していく。

本書では、台湾総督府、北投温泉、阿里山鉄道といったよく知られたものより、学校やローカル鉄道駅、診療所、神社など、一般的な観光客が訪れることのない遺構について多くの紙面が割かれている。しかし、現在では忘れ去られているとはいっても、その一つひとつに深いエピソードがあり感動のドラマが内包されている。さらに、そういった遺構を現地の人たちがいまも大切にしていて、老朽化して利用できなくなったものは破壊せずカフェや美術館として再活用しているというから心動かされる。

私自身、台湾には数年前に何度か訪れたことがあるが、その都度ガイドブック通りの旅程に終始してしまっていた。次回訪れる機会があったら、本書で紹介されている日台の歴史を紐解く旅にしたい。本書を閉じた瞬間、そういった気分に包まれた。


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