国民のための日本建国史

長浜浩明

「弥生時代には、水田稲作や青銅器、鉄器などさまざまな文化を持つ集団が、大陸から波状的に渡来したと考えられている。彼ら渡来系弥生人が列島内を拡散、先住民の縄文人の子孫たちと混血を繰り返して生まれたのが、日本民族だ」。こうした日本の古代史学界のスタンダードに対し、著者の長浜浩明氏は、「日本人の主たる祖先は縄文時代から日本列島に住み続けた人々である」という立場に立脚し反論を加える。戦後の古代史論は大学から在野にいたるまで、古事記、日本書紀といった記紀が徹底して忌避され、無視するだけでなく勝手に読み替えることが主流となり、検証に耐えられない古代史の創作が氾濫することとなる。そのため、司馬遼太郎が「韓国は日本祖先の地」などと発言するようになるのだが、各方面の記紀をはじめ文化人類学、生物科学といった考察を加えると、縄文時代に日本から無主の韓半島に移住していたことがわかる。それは半島の縄文土器や人骨が裏付けている。したがって、半島に残された3000年以上の文化はすべて日本人の祖先が伝え、教えたものとなるのだ。

本書はほかにも、神武東征の実相、邪馬台国の所在といった古代史のメインに触れ、最後に並み居る古代史家の論説を喝破していくという流れで進行していく。長浜氏は、記紀に基づきつつ古地理図や魏志倭人伝などの文献も洗ったうえで、世に出回っている古代史は間違いだというスタイルを貫く。ただ、古代史とは時代が進むにつれて答えが出なくなっていく分野であるし、だからこそ「ロマン」などと形容されるわけであるため、本書が古代史の解答という受け取り方は尚早に思える。また、本書は著者の前著のまとめ、あるいは補足といった体裁であるようで、長浜氏の著作に関心を持ったら氏の前著を手に取ってもらえればと思う。


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