日本経済は、中国がなくてもまったく心配ない

三橋貴明

21世紀に入ってから猛烈な勢いで経済成長を続け、ついには日本を追い抜いて世界第二位の経済大国にのし上がった中国。だが、堅牢かつ継続的に見えた破竹の進撃は、実は虚偽にまみれた見せかけであり、世界制覇も時間の問題と思われた経済基盤もまったく盤石ではなかった。経済評論家の三橋貴明氏が「いよいよ、韓国経済が崩壊するこれだけの理由」に引き続き、隣国経済の実態を曝く。

中国の経済成長モデルは、不当な通貨安政策に基づく輸出依存体制だ。安い人件費を売り物にして外国企業の投資を説きまくり、いまや誰もが認める世界の大工場となったものの、政府当局による為替操作により経済成長の恩恵が人民の隅々にまで行きわたらない構造となっており、富裕層と下層民の差は広がる一方。また、過度な不動産投資によるバブルは崩壊寸前で、自国の将来を不安視した富裕層は不正蓄財を抱えて海外へ逃亡している有様だ。

中国経済のこうした実態に反し、日本のマスコミは「日本経済は中国なしでは成り立たない!」と吹聴しまくっているのが現実。実際にデータを見ればわかるのだが、日本の対中輸出額はGDPのたった3%を占める程度であり、レアアースなどの希少資源に関してもすでに代替策が実用化されているため、日中経済が不可分の関係とは必ずしも言い切れない。それに、毒入り餃子に代表される安価でありながら健康への被害が懸念される中国産食品、2012年秋に発生した反日暴動での日系工場およびデパートへの破壊行為、外国企業の中国撤退を容易に許さない民事訴訟法231条の存在などの「チャイナリスク」が声高に喧伝されるようになった。

本書のタイトルは「~が崩壊するこれだけの理由」ではなく、「~がなくてもまったく心配ない」とされているため、日本経済が中国に依存していない理由を主眼に置いており、中国経済がいますぐ吹き飛ぶという書き方はされていない。だが、共産党一党独裁が13億の人民にあたえる歪み、一族以外は敵という道徳心皆無の国民性、一人っ子政策の弊害、常軌を逸した環境破壊など、その社会構造はほんの少し息を吹きかけるだけで轟音を立てて崩れ落ちそうな脆弱性を孕んでいる。さらに、輸出増大政策を決めたアメリカ、アベノミクスで円高が是正されつつある日本、お得意先だったユーロの経済停滞などにより、中国がマクロ経済上持つ唯一のメリットであった「安さ」が通用しなくなりつつある(人民元切り上げ圧力により)。日本が20年間耐え続けたデフレ経済に、中国が耐えきれるかどうか。答えは自ずと明らかだ。


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