人生がときめく片づけの魔法

近藤 麻理恵

買った物、もらった物、思い入れのある物など、捨てられず溜まっていく一方で、知らぬ間に部屋が圧迫され息苦しく感じられるようになっていく。「片づけなきゃ」と思い一念発起して腕まくりをするが、今度は何から手を付けたらいいのか、どれを残してどれを捨てればいいのかわからない。結局、片付け熱は一気に冷め、また買っては積み上げ、もらっては引き出しに詰めていく日常に逆戻り。本書は、こうした誰でも持っている片づけに関する悩みやコンプレックスを一刀両断し、単なる片づけのメソッドだけでなく、その対象となる物との向き合い方にも言及している。

「手に取ってみてときめかなかったら捨ててください」。著者の近藤麻理恵氏は、洋服、本、雑貨、電化製品、写真など、どんなジャンルの私有物に対しても、すべてこのひと言で片づける。そうは言っても、いつまた着るかもしてないし、いつかはこの本で勉強しようと思っているし、捨てるんだったらもったいないから家族にあげます――。近藤氏がコンサルタントとして赴いた家庭では、例の台詞を言うとたいていこうした反応が返ってくるという。これに対しての返答は明確で、ときめかない服は絶対に着ない、「いつか」は絶対にやってこない、愛着のないお古を押しつけられる家族にしてみれば迷惑だ、とこうだ。

しかし、ただ無感情に捨てればいいというものでもない。後ろ髪引かれつつ捨てることになった物たちに対しては、その一つひとつに本当の役割を考えてあげることで気持ちよく捨てられる。どういうことかというと、「買った瞬間にときめかせてくれてありがとう」「私に似合わないタイプの服を教えてくれてありがとう」と、それが実際に自分の手元に来ることになった経緯と効果について考え、果たしてくれた役割に感謝の気持ちを持つことで物との関係に“片をつけられる”というのだ。物に対してときめくかなんて、感受性の高い女性らしい発想だとは思うが、実際この手法で45リットルのゴミ袋何十袋分捨てられ部屋がすっきりして気分や体調も良くなったという体験談がほとんどで、リバウンドやクレームが一切ないというから驚きだ。

近藤氏はさらに、捨てられない原因は「過去に対する執着」と「未来に対する不安」にあるという。自分にとって必要な物、求めているものが見えていないから不必要な物だけが増えていくからであり、その結果、物理的にも精神的にもどんどんいらない物で埋め尽されていく。要するに、片づけられないということは自分自身と真剣に向き合ったことがないことに起因するというわけだ。だから、自分のみの周りにあるものを手に取って、心がときめくかという対話をすることで、そのものだけでなく自分自身と向き合っていく。それでときめいた物、本当に必要としている物こそ残すべきであり、そうでないものとは決別する。片づけとは、自分自身を見つめ直す棚卸しの作業に他ならないのだ。

私自身、つい最近新しいアパートに引っ越しをしたばかり。引っ越す前の段階で相当量のゴミを処分したつもりだが、それでもまだ置き場所不定で床に置きっぱなしの物がかなりある。これは私が人間的に相当未熟である証拠であろう。いい機会だ。さっそく明日にでも大きめのゴミ袋を買ってくるとしよう。


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