日本海における重油流出事故の調査に携わった青山千春博士は、その帰路、付けっぱなしにしていた魚群探知機に不可思議な反応を認める。平坦な海底から、ろうそくの炎のような高まりが発していたのだった。同船していた大学教授によると熱水かガスかもしれないとのことだったが、青山博士は直感的に「これは資源に違いない!」と確信する。のち、海底から浮上しているメタンハイドレートの粒の集まり、メタンプルームであることが判明。これを機に、「日本が資源大国にする!」との信念のもと、静かながらも力強い青山博士の奮闘が始まる。
メタンハイドレートについては、すでに太平洋側の発掘調査が政府主導で行われていたが、莫大な予算をかけている割にその歩みは遅々としたもので、国益をかけているとは到底思えないものだった。その一方で、太平洋側と比べて格段に発掘しやすい表層型メタンハイドレートの宝庫である日本海側での採掘を推し進める青山博士は、政官財界に説得に赴くがなぜか冷たくあしらわれてしまう。ときには「国賊」と呼ばれたりもした。
青山博士の無念、いや日本の国益がむざむざと脇にのけられてしまいかけている現実に業を煮やした、博士の夫・青山繁晴氏が、腰の重い官僚や企業幹部に怒りの抗議を繰り広げる。その成果もあってようやく事態は動きかけるが、国際石油メジャーや既得権益にぶらさがる日本旧来の体質は変わりようもなく、いつまでたっても埒が明かない。そこで、青山夫妻は中央に見切りを付け地方の力を結集。兵庫、京都、新潟を中心とした日本海沿岸の地方自治体の首長たちとスクラムを組んで「日本海連合」を結成し、メタンハイドレートに日本復活という夢を託す。
日本には石油や天然ガスといった資源はない、だから他国からの供給に感謝しつつ友好な関係を築いていかねばならないのだ。と、私たちは教えられてきた。それは観念論として間違ってはいないが、メタンハイドレートの安定的採掘が可能になった暁には「日本が資源大国になる」という現実がすぐそこにまできていることに気づかねばならない。もちろん、メタンガス採取から輸送、発電まで実現するには多大なる投資が必要だ。だが、メタンガスの地球温暖効果は二酸化炭素の約20倍であり、採らないで大気中に放出するのだったら採って燃やした(発電利用)したほうがはるかに地球に優しい。さらには、メタンガスを燃やすための施設も現存する火力発電所で賄えるというのだから、何をためらうことがあるという話だ。
私欲は捨て、あくまでの国益のために。霞ヶ関からの突き放しや既得権益者からの圧力、はてはいわれのない誹謗中傷にも、決して信念を曲げない。青山夫妻をはじめ、独立総合研究所の方々には本当に頭が下がる。なにせ、魚群探知機を使用したメタンハイドレート調査手法は、日本だけでなく周辺各国で特許を取得しているとはいえ、必要なところには無償で提供しているというのだから、私のような小人にまねできようはずがない。それは単に、日本を愛しているから、日本に再び立ち上がってもらいたいから、日本が永遠に繁栄してほしいからという、一見単純、だができそうでできない動機から来ていることは巻末の青山繁晴氏による稿を読めばよくわかる。
勘違いしてはいけないのは、この書は単に青山夫妻によるメタンハイドレート発掘奮闘記ではなく、私たち日本国民に対する警告であるということ。どんなに彼らが奮闘しても私たち国民が意識を共有し理解を示さない限り、成功するものも成功しない。いまや、国や政府が、国のため国民のために汗水垂らして働いてくれる時代ではなくなったのだ。