事件や戦乱中心ではなく、主に美術・文学面から見た日本人の成り立ちを、古代から現代までの通史としてなぞらえた好著。文化(西洋にも大陸にもない独自性)、宗教(神道と仏教の習合)、自然観(もののあわれ、わびさび)、天皇(125代続く断絶のない万世一系)などを通して日本人の誇りとしての歴史を紡ぎ取る。
僕は高校の時、社会科の選択科目として世界史を選んだが、日本史にしなかったのは明らかに小中学校で受けた自虐史観の影響だ。日本は何でもかんでも中国から学び、明治以降は恩人である中国だけでなくアジア諸国を侵略したという例のアレ。特に「大東亜共栄圏」は侵略の理念であると繰り返し教わったことはいまでもはっきりと覚えている。その結果、僕は日本史が、いや日本自体が嫌いになってしまった。
その後、インターネットの普及に伴い保守に目覚めた僕は、自主的に歴史関連の書物を読みあさり過去の日本が侵略国家ではなかったことはもちろん、日本が思想的・文明的に世界から羨望のまなざしを向けられていたということ、そして巨視的かつ相関的に捉えるべき「歴史」の意義を思い知ることとなる。そのとき得た気づきは、衝撃以外の何物でもなかった。この本もそのうちの一冊だ。
おそらく、この本を読んだところで日本史のテストで及第点は取れないだろう。だが、自らのルーツである日本人の成り立ちを知ることで、戦後崇められてきた欧米文化を圧倒する日本文化への矜持と、覇権主義を打破する健全なナショナリズムを育成することは可能。歴史を失い国が消滅してからでは遅いのだ。