近年、急速な経済成長により国際社会における発言力が著しく向上し、世界制覇に向けた領土的野心を剥き出しにしている中国。だが、その勇ましい外面の反対側、つまり国内事情においては、まさに人権を無視したエゴイズム渦巻く目も当てられない惨状が広がっていた。そんなお粗末極まりなくも捨て置けない中国事情を、数百回の渡航経験を通して中国事情に知悉している旧皇族の竹田恒泰氏が、ここ1年ほどの新聞記事を基に紹介する。
まず、上海市内の川に数千の豚の死骸が流れ着いた事件、愛犬が盗まれ食肉としてレストランで供されそうなったという珍事、採れすぎた大根を無償配布する告知をしたら大群衆が押し寄せ他の作物まで根こそぎ持っていかれた出来事といった、いかにも中国らしいお笑い的な記事で初っ端からボディーブローを喰らわせる。だが、記事の内容はだんだんと人ごとではなく日本に直接的・間接的に影響を及ぼすような深刻なものへと移っていき、読んでいる側としても眉根を険しくせざるを得なくなる。
「窓を開ければただでタバコが吸える」と中国版ツイッターで揶揄された大気汚染、つまりPM2.5は、日本でも大問題となったので知らない人はいないだろう。こうした中国人民(近隣諸国にもだが)の健康を脅かしている実態を皮切りに、言論の自由、都市と農村の格差という体制矛盾、チベットやウイグルへの侵略といった、人権など一切顧みない中国、ひいては国を指導していくという立場の共産党の内情を浮き彫りにしていく。さらに、このような矛盾だらけの国内事情に痺れを切らした民衆をなだめすかせる究極の手段、つまり他国領土の強奪行為へと話は及んでいく。強奪行為とはもちろん、南シナ海侵略、尖閣諸島周辺海域の領海侵犯のことである。
タイトルこそ「面白いけど~」となっているが、単純に「面白い」で済まされるのは、冒頭の豚が流れてきたあたりの数ページのみで、ほかは笑うどころか怒り心頭に発してしまう内容に尽きる。構成としては単に記事を時系列で追うだけでなく、共産党の人事や体制、歴史的経緯、中国人の根幹をなす伝統的価値観なども触れられており、ここ最近の中国を知るには非常にバランスがとれていると評価できる。そんな中でも、恐ろしく感じられるのは、本書で紹介されている記事がここ1年ほどという短期間のものであり、今後めまぐるしいペースで中国をめぐる情勢が変わることを示唆していることだろう。
こうした中国を隣人に持つ日本が取るべきスタンスとして、竹田氏が提案しているのが、「ど~も」と言って軽く頭を下げる近所付き合い程度に留めておくべきだということ。中国がしつこく挑発してきても決して乗らず、ひたすら耐えて中国がミスを犯すのを待つ。その間に日本も十分な防衛力をバランスさせていきながら戦争を避け続ける。そうしていくためには緊密な日米関係やアセアンやインド、オーストラリアなどとの連携が必須となるが、いまの安倍政権の外交力であれば実現してくれると信じたい。また、つい最近も中国による強引な防空識別圏の設定というニュースがあった。日中関係をめぐる情勢はノンストップで動いている。中国関連のニュースからますます目を離せない。