「独り相撲」で転げ落ちた韓国

鈴置高史

「日本を貶めることで国民からの喝采を得る」「日本との関係が悪いからと言い募り、米国の反中包囲網に加わらない言い訳にする」「中国のお先棒を担ぐことでその歓心を買うと同時に、反日・卑日の威力を増す」。韓国はこの3つの反日・卑日政策のもと、世界から日本を孤立させる外交に邁進していた。だが、オバマ大統領は2015年4月に訪米した安倍首相を大歓迎し、習近平国家主席は2014年11月に引き続き2015年4月にも安倍首相と会談した。アメリカとしては、日本の力を借りて中国を封じ込めようとする手前、韓国の慰安婦宣伝に乗って日本との関係を悪化させる選択肢はない。一方の中国も、対中包囲網を切り崩すには日本の懐柔が必須となるため関係改善を演出、脅せばいつでも従う韓国に配慮する必要はない。これまで離米従中に傾きつつも米中間の優秀なバランサーを気取っていた韓国にしてみれば、完全に梯子を外された格好となり、対日交渉で強硬姿勢を打ち出していた朴槿恵大統領はついに誰からも相手にされなくなってしまった。韓国の外交的苦境は深まっていく。

2015年3月5日、リッパート駐韓米国大使が、韓国の左派民族主義者に襲撃され、重傷を追った。米国務省高官の慰安婦などに関する日本寄り発言に憤激した韓国メディアが、反米を煽る中での出来事だった。この高官の発言とは、「民族感情は悪用されかねず、政治指導者が過去の敵を避難し、安っぽい拍手を受けることは容易なことだ。しかし、そんな挑発は発展ではなくマヒをもたらす」というもの。アメリカは韓国の真意を疑い、疑われた韓国は「裏切り者と見なされ、アメリカに見捨てられないか」と怖れ始めた。そして、盲目的な反日政策を繰り返すものの経済的にはすがりたい日本からは、外務省ホームページの韓国の項目から「自由と民主主義、市場経済という基本的な価値を共有する国」という表現を削除された。そんな中、3月26日、韓国はアジアインフラ投資銀行(AIIB)への参加を正式に発表。アメリカの欧州主要同盟国が雪崩を打って参加表明したので、「参加してもアメリカから睨まれない」と判断してのことだった。

とはいえ、これで韓国の地歩が固まったわけではない。4月の安倍首相訪米前、韓国は安倍首相の米議会での演説を猛烈に反対していたが予定通り行われ大喝采のうちに終わった。そのあまりに執拗な働きかけには、米議員の間に「韓国疲れ(Korea fatigue)」をもたらした。また、頼りにしていた習近平は北京とジャカルタで安倍首相と首脳会談を行った。韓国メディアは「中国は日本と本気で関係を改善するつもりだ。わが国は孤立した!」と大騒ぎした。韓国はいつものように一人相撲をして、勝手に土俵から転げ落ちただけ。言い換えれば、米中双方からは韓国などたいして重要な国とは認められていなかったということで、二股外交はついに限界を迎えたのだ。「日本を孤立に追い込んだはずが、実は自分が孤立していた」。こうなればいい、ああなればいいという理想論のみで生きている韓国人にとって、この現実がもらたすショックは相当なものだった。

朴槿恵外交はものの見事に空振りし、国内でレームダック化しつつあるだけでなく、周辺国からますます軽んじられる存在となった。そこに北朝鮮が核兵器を実戦配備する雲行きとなった。孤独感に包まれる韓国は「もう、誰からも助けてもらえないのではないか」と焦り始める。反日・卑日政策で自爆し八方塞がりとなりつつある韓国。今後、どのように立て直していくのか。朝鮮半島情勢からますます目が離せない。


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